はり・きゅうの効能と適応症
●医道の日本社「鍼灸理論」より引用させて頂きました。
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鍼施術の治療的作用
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鍼施術の治療的作用とは、生体の組織、器官の機能異常を調節し、本来の生理的な状態に回復させる作用であり疾病の状態と治療目的により、次の諸作用に分ける。 |
1、整腸作用
組織、器官に一定の刺激を与えて、その機能を調整する作用である。 |
a. 鎮静作用
疹痛や痙攣のように異常に機能が亢進している疾患に対して、鎮静させる作用である。 |
b. 興奮作用
知覚の鈍麻、消失あるいは運動麻痺のような神経機能の減弱および内臓諸器官の機能減退に対して、興奮させる作用がある。 |
2、誘導作用
患部に直接刺鍼するか、またはこれより遠隔部位に刺鍼して、その部の血管に影響を及ぼし、充血をおこし、患部の血量を調整するものとがある。 |
a. 患部誘導法
局所の血行障害に対し直接その患部に施術して血流を他の健康部から誘導する作用である。 |
b. 健部誘導法
局所の充血または炎症などの際に、その部位より少々隔たった部に刺鍼し、血液をそちらに誘導し、患部の血量を調整する作用である。 |
3、反射作用
生体の有する反射機転を介して、組織、器官の機能を亢進あるいは抑制する作用である。
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4、その他の作用
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a. 消炎作用
施術により白血球は増加し、施術部位に遊走する。またリンパ系賦活により病的滲出物などの吸収を促進させ、生体の防衛能力を高める作用である。 |
b. 防衛作用
網内系機能を高めて、白血球などを増加させて、また免疫能を高めて、各疾患の治癒機能を促進させ、生体の防衛能力を高める作用である。 |
c. 転調作用
自律神経失調症やアレルギー体質を改善して、体質を強壮にする作用である。 |
鍼施術の適応症
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適応症とは、鍼施術により治療効果の顕著な疾病または症候をいう。下記の疾病、症候は必ずしも治療機序が明確でないものの、臨床経験に基づいて鍼施術が適応するとされるものである。 |
1,神経系の疾患
各種神経痛、神経麻痺、神経症、自律神経失調症、脳卒中の後遺症、不眠症、頭痛など。 |
2,感覚系の疾患
仮性近視、白内障、麦粒腫、眼精疲労、難聴など |
3,運動系の疾患
各種変形性関節炎、リウマチ様関節炎、頸肩腕症候群、むち打ち症、五十肩、腰痛、肩凝り、捻挫、腱鞘炎など。 |
4,循環系の疾患
本態性高血圧症、動脈硬化症の諸症状など。 |
5,消化系の疾患
慢性の胃炎、慢性の腸炎、神経性消化不良、便秘、下痢、痔疾など。 |
6,呼吸系の疾患
気管支喘息、気管支炎、咽頭炎、喉頭炎、鼻炎、感冒、扁桃炎など。 |
7,泌尿系の疾患
膀胱炎、尿道炎など。 |
8,代謝疾患
脚気、痛風など。 |
9,小児科疾患
小児消化不良、小児の癇、夜尿症、夜鷲症など。 |
10,婦人科疾患
月経不順、月経痛、冷え性、更年期障害など。 |
灸施術の治療的作用
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灸施術の治療的作用は鍼施術の治療的作用と同様であり
・整腸作用
・誘導作用
・反射作用
・その他の作用に分けられるが、特に灸の血液像(赤血球、血色素量など)血液凝固時間の短縮、あるいは循環系に対する作用が認められ、増血作用、止血作用、強心効果などがある。 |